およそ1億年から7千万年前、地球上に最初の霊長類が現れました。原猿、サル、類人猿、ヒトをすべてあわせたグループが、霊長類です。「死」という創造的破壊と累代繁殖を繰り返しながら進化を遂げてきた時間の中で、遥かむかしの中新世(2600万~500万年前)の時代に私たち人間は類人猿から分岐して、ホモ・サピエンスとして登場することになりました。そしていまや生態系ピラミッドの頂点に立ち、文明社会を築き、テクノロジーの進化によって、まるでホモ・サピエンスだけで栄華を誇っているかのようですが、果たして、 いまの状態はサステイナブル(持続可能な)といえるのでしょうか。
動物の目線から、世界をみて、SDGsのつながりを考えてみる。動物園の動物に、その動物ならではの自然の叡智を教えてもらう。私たちは「持続可能な未来」をどのように共創していけるのか。今回は金沢動物園に暮らす「シロテテナガザル」に学び、ビジネスや環境、動物それぞれの領域における達人と一緒に考えます。
オムロン株式会社
イノベーション推進本部
インキュベーションセンタ長
立石電機(現オムロン)入社。
流通・鉄道業界の大型プロジェクトPM、新規事業推進。
以後オムロンソフトウェア代表取締役社長、オムロン直方代表取締役社長、ドコモ・ヘルスケア代表取締役社長を経てオムロン株式会社インキュベーションセンタ長、一般社団法人データ流通推進協議会理事、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会PLL促進会議有識者委員、京都大学経営管理大学院客員教授 等を務める。
国立環境研究所地球環境研究センター
気候変動リスク評価研究室 主任研究員
北海道大学理学研究科地球惑星科学専攻 理学博士号取得。
国立環境研究所に入所後、英国気象局ハドレーセンター、海洋研究開発機構を経て、国立研究所地球環境研究センター 気候変動リスク評価研究室の主任研究員。
気候変動のメカニズム、気候変動が人間社会や生態系に及ぼす影響、永久凍土の融解、地球環境と人間活動の関わりに関する研究を進める。
横浜市立金沢動物園 管理係 広報担当
(公財)横浜市緑の協会職員。
よこはま動物園飼育展示係を経て、金沢動物園管理係広報担当。
2007年から2年間、ウガンダ共和国のチンパンジーの森へ青年海外協力隊員として休職赴任。環境教育隊員として、チンパンジーの保全に向けたエコツーリズムの導入・促進に従事。帰国後、よこはま動物園でチンパンジー等の担当として復職。飼育業務と並行して持続可能な社会に向けた環境社会教育イベントを企画・実施してきた。
コミュニカーレ株式会社
代表取締役
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科国際関係学専攻 修士号取得。
日本のODA外交をテーマとし、貧困削減を目的とした母子教育によるコミュニティエンパワーメントについて研究。カンボジアでの調査経験を通じ、貧困削減の鍵は、起業家精神にあることを痛感。卒業後は大手・中小企業で、営業・マーケティングを中心に幅広く経験。「グローバルにおけるジャパンブランドの発信と、その先の異文化との共創」を志し、バングラデシュとは縁が深い。
京都大学 野生動物研究センター 特任教授
京都市動物園 生き物・学び・研究センター センター長
京都大学博士号取得(理学)。
京都大学霊長類研究所助教、同大学野生動物研究センター准教授を経て、2013年から現職。専門は、比較認知科学。
「マンドリルとテナガザルを対象とした比較認知科学的研究」等。
著書に、「生まれ変わる動物園~その新しい役割と楽しみ方~」(2013年、化学同人)、
編著書として「いのちをつなぐ動物園~生まれてから死ぬまで、動物の暮らしをサポートする~」(京都市動物園生き物・学び・研究センター編、2020年、小さ子社)。
京都大学霊長類研究所 研究員
公益財団法人日本モンキーセンター(JMC)アドバイザー
中部大学 非常勤講師
京都大学理学研究科博士後期課程単位取得退学。
霊長類学、比較認知科学、比較発達心理学、アニマルウェルフェア、飼育管理、データベース領域を、活動領域とする。テナガザル研究における第一人者。著書に、『テナガザル : 森に響く歌声.日本モンキーセンター 編. 霊長類図鑑ーサルを知ることはヒトを知ること』(2018年、京都通信社)、『インドネシアのワウワウテナガザルをたずねて』(2018年、科学)等。
『WONDER DOORS』 は、私たちの地球の感性を高める
「生活者視点のインテリジェンス」を、
「専門家の暗黙知」を、
「動物×SDGs」の軸でキュレーションして記事・動画コンテンツとを
「地球のマンダラ★ワンダー」シリーズとしてお届けします。
「動物」の目線で、世界を、SDGsを、ながめてみる。
動物の目線で、世界と、「わたしたち人間」と、SDGsの ”つながり”をまなぶ。
”他者の環世界”(umwelt)の扉を、開けてのぞいてみよう。
“自分の環世界”(umwelt) を味わい、”他者の環世界”(umwelt)も
自由に旅する力を磨こう。
*環世界(=Umwelt:ウンベルト)
ドイツの生物学者であるユクスキュル氏(1864〜1944)が提唱した ”すべての生物は自分自身が持つ知覚によってのみ世界を理解しているので、すべての生物にとって世界は客観的な環境ではなく、生物各々が主体的に構築する独自の世界である”という考え方。
「持続可能な開発目標」として、国連で決定された国際社会共通の目標。 2030年までに達成すべき17の目標と、それぞれの目標に紐づく169のターゲットが決められています。
サイ
ゾウ
オカピ
オオツノヒツジ
コアラ
カピバラ
テナガザル科はヒト上科に属していますが、同じくヒト上科に属するヒト科から分岐したのは2000万年から1600万年前といわれています。
人間にもっとも近い 「類人猿」で、チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、オランウータンに並びますが、小型なので 「小型類人猿」と呼ばれます。
インド東端を西限とした南アジア、中国最南端を北限とし、東南アジアの熱帯雨林の林冠を移動して暮らしています。「樹上生活者」なので 腕が足のほぼ2倍の長さに発達し、地上に降りてくることは、稀です。テナガザルは類人猿の中で最も「種」の多様性に富み、シロテテナガザルは手が白いので「シロテテナガザル」との和名で呼ばれています。
ユウタロウは元気で気ままな性格。すばやい動きでお客様を驚かせたりして楽しんでいます。
慎重派のインタンは、ユウタロウとは対照的な性格。でも、年下のユウタロウにはなぜか強気でいることも。マレーシアから、やってきました。
ユウタロウは元気で気ままな性格。すばやい動きでお客様を驚かせたりして楽しんでいます。
慎重派のインタンは、ユウタロウとは対照的な性格。でも、年下のユウタロウにはなぜか強気でいることも。マレーシアから、やってきました。
テナガザルの目線で、世界を、SDGs軸をみてみると、なにが見えるでしょうか?
野生のテナガザルは、東南アジアの熱帯雨林の樹上で暮らしています。
ところが、その暮らしの基盤となっている熱帯雨林の著しい現象が、地球規模の課題となっています。テナガザルが暮らす東南アジアの熱帯雨林では、2010年~2015年の間だけでも年平均で森林平均が50万ヘクタール以上減少しています。
その主な原因として、プランテーション用地利用等のための森林伐採や、自然回復力に配慮しない非伝統的な焼畑農業、燃料用木材の過剰な摂取、森林火災などが指摘されています。